看護師として特定の診療科に何年も務めていると、キャリアアップのために認定看護師になりたいと思う方もいらっしゃると思います。
認定看護師になると専門性が高まり、病院内でも頼りにされることが増えたり、転職する際のアピールポイントにもなります。
しかし、この認定看護師が2020年になくなるのでは?と言われているのです。
結論から言うと、認定看護師制度はなくなりません。
しかし、認定看護師制度にいくつかの変更点があります。
認定看護師は特定行為研修が必須になり、特定認定看護師と名乗れるようになります。
新しい認定看護師制度に関して、あなたはきちんと理解していますか?
新しい認定看護師制度と特定認定看護師、また新しい認定看護分野についても説明していきます。
認定看護師と認定看護分野
認定看護師とは、日本看護協会に「認定看護分野」ごとに専門性の高い看護技術と知識を用いて、水準の高い看護を実践できると認められた看護師です。
簡単に言うと、「ある分野の中で深い知識と高い技術を持った看護師」のことです。
認定看護師には「実践」「指導」「相談」の3つの役割があります。
患者・家族に対して、専門性を活かした実践・指導・相談を行うことで、より良い看護を提供できるように努めているのです。
認定看護師には専門的に看護の知識や技術を高めるために、21の認定看護分野が特定されています。
- 救急看護
- 皮膚・排泄ケア
- 集中ケア
- 緩和ケア
- がん性疼痛看護
- がん化学療法看護
- 感染管理
- 訪問看護
- 糖尿病看護
- 不妊症看護
- 新生児集中ケア
- 透析看護
- 手術看護
- 乳がん看護
- 摂食・嚥下障害看護
- 小児救急看護
- 認知症看護
- 脳卒中リハビリテーション看護
- がん放射線療法看護
- 慢性呼吸器疾患看護
- 慢性心不全看護
いままでの認定看護師制度が2020年になくなる?
現行の認定看護師制度の教育が始まって、20年が経過しました(1995年に認定看護師制度発足)。今後は、新たな社会ニーズへの対応を目指し、2025年の高齢化の進展による医療や介護の需要増大を鑑み、質の高い医療・介護などのサービスが必要な時に切れ目なく提供され、在宅や地域医療の充実にも貢献できるよう、認定看護師制度を基盤に特定行為研修を組み込んだ新たな教育や役割に発展させ、認定看護師制度を再構築することに取り組みます。
つまり、いままでの認定看護師制度がなくなるのではなく、新しい認定看護師制度ができるということなのです。
新しい認定看護師制度の大きな変更点
新しい認定看護師制度で変わるポイントは大きくこの2点。
- 特定行為研修を組み込む
- 認定看護分野を再編
特定行為研修を組み込む
認定看護師になるために、特定行為を行えるようになるための研修が組み込まれます。
特定行為は、診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる次の38行為です。
出典:厚生労働省 特定行為とは
特定行為研修は、これらの特定行為を行う場合に必要とされる実践的な理解力・思考力・判断力、および高度かつ専門的な知識と技能の向上のための研修です。
- 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整
- 侵襲的陽圧換気の設定の変更
- 非侵襲的陽圧換気の設定の変更
- 人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整
- 人工呼吸器からの離脱
- 気管カニューレの交換
- 一時的ペースメーカの操作及び管理
- 一時的ペースメーカリードの抜去
- 経皮的心肺補助装置の操作及び管理
- 大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整
- 心嚢ドレーンの抜去
- 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更
- 胸腔ドレーンの抜去
- 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された 穿刺針の抜針を含む)
- 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
- 膀胱ろうカテーテルの交換
- 中心静脈カテーテルの抜去
- 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
- 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
- 創傷に対する陰圧閉鎖療法
- 創部ドレーンの抜去
- 直接動脈穿刺法による採血
- 橈骨動脈ラインの確保
- 急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理
- 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
- 脱水症状に対する輸液による補正
- 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与
- インスリンの投与量の調整
- 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整
- 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整
- 持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整
- 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
- 持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整
- 持続点滴中の利尿剤の投与量の調整
- 抗けいれん剤の臨時の投与
- 抗精神病薬の臨時の投与
- 抗不安薬の臨時の投与
- 抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整
認定看護分野を再編
認定看護分野の一部の名称が変更になったり、分野が統合されて再編されます。
- がん薬物療法看護(がん化学療法看護)
- 生殖看護(不妊症看護)
- 在宅ケア(訪問看護)
- 呼吸器疾患看護(慢性呼吸器疾患看護)
- 心不全看護(慢性心不全看護)
- 脳卒中看護(脳卒中リハビリテーション看護)
- 腎不全看護(透析看護)
- 摂食嚥下障害看護(摂食・嚥下障害看護)
- 小児プライマリケア(小児救急看護)
- クリティカルケア(救急看護・集中ケア)
ここまでの認定看護分野は、2020年度以降は特定行為研修を組み込んだ新たな認定看護師教育を開始することになります。
- 緩和ケア(緩和ケア・がん性疼痛看護)
- 認知症看護
- 手術看護
- 糖尿病看護
- 皮膚・排泄ケア
- 感染管理
- がん放射線療法看護
- 乳がん看護
- 新生児集中ケア
ここまでの認定看護分野は、いままでの認定看護師教育を2026年まで実施します。
2020年度以降は、特定行為研修を組み込んだ新たな認定看護師教育を開始することになります。
いままでの認定看護分野はなくなる?
では、名称が変更になった認定看護分野はなくなってしまうのでしょうか?
- がん性疼痛看護
- 救急看護
- 集中ケア
- がん化学療法看護
- 不妊症看護
- 訪問看護
- 慢性呼吸器疾患看護
- 慢性心不全看護
- 脳卒中リハビリテーション看護
- 透析看護
- 摂食・嚥下障害看護
- 小児救急看護
これらの認定看護は、いままでの認定看護教育を2026年まで実施するので、なくなるわけではありません。
更新もできるので、新しい認定看護師制度に完全に移行してからでも、認定看護師を名乗ることができます。
いままでの認定看護師のなり方(A課程認定看護師)
いままでの認定看護師は認定看護師認定審査への受験資格を得て、審査に合格することで認定看護師になることができました。
- 看護師資格を持っている
- 看護師の実務経験が5年以上ある(うち3年以上は専門分野での実務経験。期間は「連続」ではなく「通算」)
- 認定看護師教育機関で6ヶ月以上1年以内に、615時間以上の認定看護師教育を修める
これらの受験資格を満たして、認定看護師認定審査に合格すると認定看護師として活動することができます。
認定看護師は5年ごとに資格の更新が必要です。
新しいの認定看護師のなり方(B課程認定看護師)
新しい認定看護師になるための流れは、基本的にはいままでの認定看護師のなり方(A課程認定看護師)と同じです。
2020年度から教育開始となる特定行為研修を組み込んでいる認定看護師教育機関(eラーニングや集合教育、実習等を含める)で1年以内に800時間程度学び、認定看護師認定審査に合格すること。
いままでの認定看護師制度との大きな違いは、特定行為研修を受けることが必須になっていることです。
そのため、特定行為研修を修了した認定看護師については、「特定認定看護師」と名乗ることができます。
新しい認定看護師制度でも、5年ごとに資格の更新が必要です。
いままでの認定看護師制度はいつまで続く?
では、いままでの認定看護師制度はいつまで続くのでしょうか?
認定看護師の認定審査
いままでの認定看護師の認定審査は、2026年度の教育終了後3年後の、2029年度まで実施されます。
認定看護師の更新審査
いままでの認定看護師の更新審査自体は、ずっと実施されます。
そのため、新しい認定看護師にならない場合でも、更新審査に合格すれば認定看護師資格を持ち続けることができるのです。
いままでの認定看護師が新しい認定看護師になるための方法
特定行為を行える「特定認定看護師」になりたい人は、どのような手続きが必要なのでしょうか?
現時点で認定看護師の方は、すでに資格取得後の研鑽を積んでいます。
そのため、特定行為研修を修了し、2021年度から開始する移行手続きを行うと新しい認定看護師になることができます。
認定看護師がなくなる?特定行為研修が必須になった特定認定看護師とは【新しい認定看護分野は?】まとめ
2020年から認定看護師制度が変わりますが、認定看護師がなくなるわけではありません。
新しい認定看護師教育が開始となり、認定看護師は特定行為のできる「特定認定看護師」になるのです。
現在、認定看護師を持っている方は、特定行為研修を受けると特定認定看護師になることができます。
しかし、いままでの認定看護師教育も2026年度まで並行して実施されるので、これから認定看護師になろうとしている方は注意して下さいね。
認定看護師制度が変わり、特定認定看護師を取る人がこれから増えてくると思います。
看護師が特定行為ができるようになると、看護師の活躍の場は病棟だけに留まりません。
日本は超高齢社会なので、これからはさらに地域で生活していく高齢者が増えていきます。
特定認定看護師になることができれば、施設や訪問看護などでの需要が増えるのは容易に想像できるでしょう。
いまの病棟以外に、看護師免許を活かせる病棟以外の働き方を見てみませんか?